マンションとペットの最近の判例 -- 判例にみるペット問題と、その解釈と変遷 --

平成16年9月22日判決 福岡地裁 「(マンション売主への)損害賠償請求事件」

 マンションにおけるペット飼育に関して、売主である販売業者の説明義務違反及び不法行為責任が否定された事例。
 
(原告)分譲マンション購入者 (犬の飼い主)
(被告)不動産の売買及び仲介等を目的とする会社

(内容)原告が、被告に対し、被告が原告に対してマンションを販売する際、ペットの飼育に関して不適切な説明を行い、原告を同マンションでのペットの飼育が可能であると誤信させてその売買契約を締結させたとして、損害賠償または不当利得の返還を請求している事案である。
(判決)原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。
(理由)本件売買契約に関し、被告に債務不履行及び不法行為があったとは認められず、また、本件売買契約は有効に成立しており、原告による取消しも認められないから、被告は、原告に対し、損害賠償義務及び不当利得返還義務を負わない。 

(解説)
 飼育に関して明確な規約を持たない(曖昧規約)マンションにて。
一部の買い手には、「飼育可」また、他の買い手には「飼育不可」として販売していた売主に対して、「ペット可が条件」で購入したパグの飼い主が「飼育可である」「将来的に飼育を保障されている」と誤認させられた。そして、「被告がペットアレルギーの子供がいる家庭に隣家を売ったことで、大変な気遣いを必要とし、飼育が困難」と損害賠償を訴えたもの。

しかし、売主は「マンションでのペット飼育は禁止が常識。飼育可ならば<足洗い場>などの設備が設置されているものである。そもそも飼育の可否は管理組合で決めるもの」という主張。

 裁判所は このような「曖昧規約」において「現行管理組合規約等が改正されない限りペット飼育が不可能になるものではない」と原則を判断。
 「危害迷惑をかける行為に該当しない場合に限りペット飼育はは可能」とは売主は説明しており、これは「規約」の解釈を述べたのに過ぎない。よって、これに対しての説明義務違反はない。
 「重要事項説明」の中で、「管理規約」の変更は管理組合によって変更しうるものと記載があるので、売主は将来的な内容を確定的に説明する事は出来ない。したがって、制定予定の内容説明の義務を負うにとどまるとしています。
 また、原告が「犬を散歩のために室外に出す際には,できる限りエレベーターに乗らないようにしている。また、隣家にペットアレルギーを持つ子供がいるため、室内にいてもできるだけ窓を開けない、バルコニーの隣家寄り部分には洗濯物を干さない等の配慮をしている」と主張しているのに対し、「原告がアレルギーのある隣家に対しての配慮として行っていることは、ペットの飼育が可能なマンションであっても、当然に必要とされるものであるから、特段、原告のペットの飼育を困難にするものとはいえない」とも言っています。

 詳細・正確なものは、「判決文」を御確認下さい。

 売主が保身のために「ペット設備がないのだから禁止が常識」と主張を繰り返しているにも関らず、裁判所はこの点には判決文を読む限り一切触れていません。
 以前の「横浜ペット裁判」で、裁判官が「ペット飼育には相当の設備が 云々」と言ったのに対し、有識者が「何千万円以上出して購入した家が、そんなあばら家だと言うのか」「通常のマンションなら問題なく飼育可能だ」と怒りの声を上げましたが、数段進歩したと思えます。

(H16. 9.22 福岡地方裁判所 平成15(ワ)974 損害賠償請求事件)

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Last Update : 2005年09月02日